最近、「居酒屋」に行きましたか? コロナ禍でいろいろと営業の規制が厳しい時期もありましたし、また、「波」が何度も繰り返される今の世の中では、自主規制せざるを得ないという人も多いことでしょう。しかし、仕事帰りに立ち寄る「居酒屋」でのひとときは、何物にも代えがたい「癒(いや)し」と言う居酒屋ファンは、きっと多いことと思います。
というわけで、多くの「居酒屋」でよく目にするメニューの中から、「漢字で表記されていたら読めないかもしれないもの」を集めてみました。
1.「水雲」
最初は、お通しがわりに「水雲」と行きましょうか。もちろん、「スイウン」や「みずくも」ではありませんが、「水」が含まれていますので、「水」があるところに生息していました。夏はやはり、酸っぱいものが食べたくなりますね。さて、これは何と読むでしょうか?
正解は、「もずく」でした。
同じ海洋の温海域で生育する「ホンダワラ」科の海藻などに着生して生育することから、「藻付く(もづく)」という名があると考えられています。細く柔らかな糸状でぬめりがあり、三杯酢で食されるのが一般的ですが、沖縄料理では、天婦羅(テンプラ)でも食されます。
2.「蚕豆」
次は、ビールとの相性抜群の「蚕豆」です。ビールなら「枝豆(えだまめ)」でしょ、という声が聞こえてきそうです。もちろん、それを否定するつもりはありませんが、茹(ゆ)で上がったばかりの「蚕豆」も捨てがたい。さて、何と読むでしょうか?
正解は「そらまめ」でした。
実はこの「そらまめ」は、「空豆」(あるいは「天豆」)と書くのが一般的ですが、これなら皆さん難なく読めてしまいますので、あえて難しいほうで紹介しました。本来「そら」とは読まない「蚕(かいこ)」の字を当てるのは、「豆」を包む「鞘(さや)」の形状が、「絹」を作り出す「養蚕(ヨウサン)業」のそれに似ているからですね。
調理法として、塩茹での他には、鞘ごと焼いて食すのが一般的ですが、煮豆とか甘納豆の材料としても使われます。俗に「お多福豆」と呼ばれる豆は、この「蚕豆」の大粒のものです。
3.「鹿尾菜」
最後は「鹿尾菜」です。「水雲」「蚕豆」で最初のビールを仕上げたら、次は、日本酒にもスイッチ可能な「酒の宛(あ)て」といきたいですね。カウンター前に大皿が並ぶ、いい感じの居酒屋なら、かなりの確率であります。けっしてメイン料理ではありませんが、ここに美味しそうなこの煮物が盛られていたら、私は間違いなく注文してしまいます。さて、何と読むでしょうか?
正解は、「ひじき」でした。
「鹿尾菜」は、最初の問題の「水雲」のところでも出てきた「ホンダワラ」科の海藻で、実は日本では古くから食用とされてきました。「ひじき」の名前の語源自体は諸説ありますが、それに「鹿尾菜」の漢字を当てるのは、その形状をたとえたものであると考えられています。様々な料理の食材として使用されますが、やはり一般的なのは、乾燥したものを水につけて戻し、人参(ニンジン)や油揚げと一緒に甘辛く煮た「鹿尾菜煮」でしょう。かつては家庭料理の定番でしたが、今では「酒の宛て」となる居酒屋料理としてもはずせない存在です。
ちなみに、「酒の宛て」とは、「お酒にあてがうもの=酒の肴(さかな)」のことですが、味わい深い良き言葉だと思います。
居酒屋特集は、いかがでしたか?メインの料理まで行き着かず、「前菜の小鉢」で終わってしまったので、いつか続編をと考えておきます。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「当て字・当て読み漢字表現辞典」(三省堂)
・「できる大人の漢字大全」(三笠書房)
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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