今だから話せる宝塚時代の思い出は? 柚希礼音さん&愛希れいかさんが先輩後輩クロストーク!

宝塚歌劇トップスターとして絶大な人気を誇った柚希礼音さんと、元トップ娘役の愛希れいかさんが、3年ぶりに上演されるミュージカル『マタ・ハリ』のW主演に決定! 作品について熱く語っていただいた前回のインタビューに続き、今回は元宝塚の2人がざっくばらんに先輩後輩トークを展開。宝塚ファンにはたまらない、“今だから話せる”エピソードも要チェックです。

PROFILE

柚希礼音●1999年、85期として宝塚歌劇団入団。2009年、星組トップスターに就任。6年を超えてトップを務め、2014年には武道館リサイタルの成功を収めるなど、多くの伝説を作る。2015年、退団。退団後も舞台、ミュージカルを中心に活躍中。

愛希れいか●2009年、95期として宝塚歌劇団入団。2011年、月組トップ娘役に就任。娘役としては異例のバウホール単独主演を果たす。2018年、退団。退団後も「エリザベート」でタイトルロールを務めるなど、ミュージカルを中心に活動。

お互いの印象は“太陽”と“たんぽぽ”!

宝塚歌劇団の先輩後輩であるお二

宝塚歌劇団の先輩後輩であるお二人。お互いの印象を教えていただけますか?

柚希さん:ちゃぴちゃん(=愛希さん)のことは、入団したばかりのまだ男役だった頃から見てきています。最初、「新星若手男役スターがきた!」と思ったら、いきなり娘役になって(笑)。可愛いたんぽぽみたいで、彼女がいるところだけぽっと日が差している感じ。舞台って人柄が丸裸に出るところだから、素のちゃぴちゃんも本当に可愛らしい方なんだと思います。トップ娘役になったときには、変に背伸びしない、地に足がついていて真っ直ぐ前を見据える感じに成長していました。いろんな役を演じてらっしゃいますが、どんなときでも“幸せオーラ”のある方だなって思っています。

愛希さん:ちえさん(=柚希さん)は、真ん中力がすごいんです! 舞台を観ていても、一緒に出演していても、普段でも、なんかついて行きたくなる感じ。「ちえさーん!」って背中を追いかけたくなる。私がたんぽぽだとするならば、ちえさんは私がいつも見つめている太陽。憧れの存在です。華やかで眩しいのですが、それと同時に皆が手を差し伸べたくなるような、可愛さも持ち合わせていて。太陽みたいにすごいのに、なんか助けたくなる。そんな可愛さ、ずるい!って思ってます(笑)。

柚希さん:私、そもそもは後輩キャラですから。末っ子だし、小さい頃習っていたバレエでも教室で一番年下で。年上に囲まれて育ったから、後輩でいることの方が多かったんです。

“後輩キャラ”を卒業したキッカケ

後輩である愛希さんから見て、柚

後輩である愛希さんから見て、柚希さんの“先輩力”を感じるポイントは?

愛希さん:私からすれば、ちえさんはいつも輝く憧れの存在。努力ももちろんされてると思うんですが、わざとらしくなく自然に、まわりに「ついていきたい」って思わせるって、才能だと思うんです。ちえさんの太陽みたいなエネルギーって真似しようと思っても真似できなくて。同じようにしてみようと思っても、ガチガチに力が入ってしまって空回りしてしまいます。人を惹きつける力に、圧倒的な先輩力を感じます。

柚希さん:そんなふうに言ってもらえるのはありがたいけれど、実は宝塚に入って一番難しかったのが、下級生と話すこと。それまで先輩から教えてもらうことが多かったので、自分で考えて意見するクセがついていなくて。後輩キャラだから、私が演技をすると、そのそばから先輩方が「もっとああした方がいい」「ここはこうした方がいい」って言ってくれるんです。アドバイスをもらうがままに星組で育ったのですが、「求めなくても言ってもらえることは、良いことでもあり悪いことでもあるよ」という言葉も頂いて。先輩方からのためになる教えに満足していて、自分で考えられていなかったんですよね。トップになると、周囲からアドバイスをもらえる機会も減り、ようやく自分で考えて成長しないといけないんだ!って実感して。責任感が芽生えたことでひとつ成長できた感じがありました。

トップ役だからって完璧じゃなくていい

トップ役としてチームを引っ張る

トップ役としてチームを引っ張るために意識したことはありますか?

柚希さん:トップスターになった頃、「真矢みきさんってね、お稽古場から娘役をはべらかしていたらしいよ!」と聞いたので、真似しようと頑張ってお稽古場からカッコつけていたら、周囲からは「何で不機嫌なの?」って言われてしまい、作戦は失敗(笑)。じゃあ、ファンの皆さまとのトークでは良いことを言うぞ!と思ったら、言葉が出てこなくて話ができない人と思われてしまったり。下級生には頼れるトップって思われたい!と台本を一日前にもらってわからない漢字を予習したこともあったけれど、無理って失敗するし続かないことに気づいたんです。それからは無駄なことに肩ひじを張るのはやめると決めました。ファンの方と話すときは賢い言葉でなくていいから思ったことを言おうと心がけて。お稽古場では完璧な私を見せることよりも、トップだからって全て完璧なわけではないし、弱くて泣くこともあるんだよって。作らず本当の姿を見せるようにしたら、組の一体感が高まりました。

愛希さん:宝塚って何よりも男役さんありきの世界。男役がいてこそ女役も輝けるんですよね。私が心がけていたのは、相手役さんが気持ちよく舞台に立てるよう考え抜くこと。自分がうまくできなくて迷惑をかけることはたくさんありましたけど…。恋愛でも友人でも、好きな人にはとにかく幸せで、楽しくいてほしいじゃないですか。男役と女役にそういう信頼関係があるのが、宝塚の素敵なところだと思います。

柚希さん:ちゃぴちゃんがトップ娘役のとき、男役を「支える!」と強く意識していた姿がとても男前だったよね。相手を思いやる気持ちと、トップ男役さんを無理させないぞ!という姿勢。そういう強さって、素晴らしいなと思います。

宝塚を退団するとメーク迷子になりがち!?

宝塚OGならではの“あるある!

宝塚OGならではの“あるある!”なエピソードはありますか?

柚希さん:ちゃぴちゃんが退団して最初の舞台を見に行ったとき、メークに関して気になり、話したことあったよね? 今までちゃぴちゃんのメイクに対して気になることなかったのに!

愛希さん:舞台後に「メーク、変やで」って言ってもらいました(汗)。どれくらい薄くしたらいいのかわからなくなっちゃって、試行錯誤してたんです。

柚希さん:私も退団したときに、宝塚以外の舞台メークがわからなくなったから。舞台で私だけメークが濃くて、共演者に突っ込まれた経験もあって(笑)。宝塚を出て“外の世界1年生”で、本来失わないでいるべき良さまでわからなくなってるんじゃないかなって心配になって。私も同じことで悩んだので、「全部を“宝塚じゃない”に変える必要はなくて、元の良さは活かしていいと私は思うよ」ってアドバイスしました。

愛希さん:退団して初めてのミュージカル『エリザベート』でWキャストだった花總まりさんに使っているアイテムをお聞きしたんですが、花總さんには似合っても私には似合わないものもあって。でも、ちえさんにアドバイスを頂いてからはメークに迷わなくなりました。

柚希さん:次に観に行ったときは、めっちゃ可愛いちゃぴちゃんに戻ってたね(笑)。私、宝塚の下級生時代に先輩から「なんでリーゼントがそんなに下手なんだ!」って言われ続けてきたんです。自分の顔を知る、全体を見る、お客さまからどう見えるか考える、を徹底的に教えてもらうことで私も成長できたので、良かれと思うことは後輩に伝えるようにしています。

愛希さん:アドバイスをもらえるってありがたいです。

柚希さん:“元宝塚”をどう捉えるかって難しいんです。何かと元男役や元娘役という言葉が出てくるから気になるし。でも、私は男役だったことを消そうと思っていないし、ちゃぴちゃんも娘役だったことを消すことはできないし。それがあっての今の自分だから。歩んできた道があるからこそ、今の自分があるのだから、いいことは残しつつ、いろんなことをプラスして進んでいけばいいって思います。

愛希さん:先を行くちえさんにそう言ってもらえると勇気が出ますね。ありがとうございます!

6月に開演する『マタ・ハリ』について、読者にメッセージをお願いします。

柚希さん:家で映画やドラマ、ネットを観るのは楽しいですし、コロナ禍で劇場に行くことを躊躇しがちだと思います。でも、生の舞台を観て、そこに生きて演じている人を観たときの感動ってすごいと思うんです。劇場も出演者もスタッフも全員が細心の注意を払っているので、観たいなって思ったら、いらしていただけたら嬉しいです。

愛希さん:わたしもちえさんと本当に同じ気持ちです。コロナ禍により観劇を長い間我慢されている方が多いと思います。観にきてよかったと思っていただける舞台できるようお稽古を頑張っていきます。舞台の生のエネルギーを味わって、心の栄養をたっぷりチャージしてください!

ミュージカル『マタ・ハリ』公演情報

フランク・ワイルドホーンの美し

フランク・ワイルドホーンの美しく雄弁な音楽が、歴史に名を残した一人の女性の“愛と悲劇の物語”をドラマティックに描くミュージカル『マタ・ハリ』。主人公マタ・ハリをWキャストで演じるのは、2018年の日本初演で圧倒的な存在感とカリスマ性で観客を魅了した柚希礼音と、マタ・ハリ役初挑戦となる愛希れいか。チケット好評発売中。

東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
日程:2021年6月15日(火)~27日(日)
刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
日程:2021年7月10日(土)・11日(日)
梅田芸術劇場メインホール
日程:2021年7月16日(金)~20日(火)

https://www.umegei.com/matahari2021/

 

フォトギャラリー(全画像を見る4枚)

<衣装詳細>
(柚希さん)ドレス¥191,400/ステラ マッカートニー(ステラ マッカートニー カスタマーサービス tel. 03-4579-6139)ピアス¥20,900/シー•ミー(アッシュ・ペー・フランス tel. 03-5778-2022)

(愛希さん)トップス¥46,200/セルフポートレート(IZA tel.0120-135-015)パンツ¥72,600/3.1 フィリップ リム(3.1 フィリップ リム ジャパン tel.03-6433-5011)その他/スタイリスト私物

撮影/神戸健太郎 ヘアメーク/黒田啓蔵<Iris>(柚希さん) 杉野智行<NICOLASHKA>(愛希さん) スタイリング/間山雄紀<エムゼロ>(柚希さん) 山本隆司(愛希さん) 取材/よしだなお 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)

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最新号 202405月号

3月28日発売/
表紙モデル:山本美月

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