【仲村トオルさん】「舞台の魅力からオフタイムの過ごし方」CLASSY.特別インタビュー

現在放送中のドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』に出演され、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍している仲村トオルさん。8月22日から公演される舞台“ケムリ研究室no.2”『砂の女』に向けての思いに加え、プライベートな素顔についてもお話を伺いました。

――今回の舞台『砂の女』は、劇

――今回の舞台『砂の女』は、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんと女優の緒川たまきさんが結成した演劇ユニット“ケムリ研究室” の第2回公演。仲村さんは第1回目公演(『ベイジルタウンの女神』)に続いての出演になります。
「2010年に舞台『黴菌』で初めて演出を受けて以来、KERAさんの演出作品は僕にとって楽しくて、発見があって、苦しかったこともありましたが重要な経験でした。きっと今回もそうなるだろうと、内容もわからないままに『やります!』って返事をしてました」

――原作は1964年に映画化もされた安部公房の長編小説です。原作は読まれましたか?
「自分がこの男を演じるんだなと思いながら読んだせいか、『なんかジャリジャリする』みたいな感触で、ずっと砂が顔や体にまとわりつく不快感を感じてたのでスピーディにはページをめくれなかったんです(苦笑)。でもDVDで観た映画ではその不快感がなくて、むしろ清潔な感じがしたり…。ラストシーンでは、閉ざされたところに居続けることを自ら選んだという、ある種の解放感すら感じました」

――仲村さんにとってのKERA作品の魅力とは?
「KERAさんの作品に限らないのですが、1カ月以上稽古して1カ月くらい本番をやることで、使えてなかった道具がうまく使えるようになったり、新しい道具が自分の引き出しの中に残るというか。最初に手渡された時は『これ使ったことないな』っていう道具が、終わった時には(自分の)新しい道具になっていることが舞台ではよくあるんです。KERAさんの場合はその手渡される道具がとても珍しくて、見たことのないようなものを渡される感覚が強いです。どうやって使えばいいのかまるでわからないなと思いながら、KERAさんに言われるがままに使っていると、いつの間にか自分のものになっている。新鮮な経験が経験だけで終わらず、筋肉なのか心の強さなのか、何か体に残るんですよね」

――舞台だけでなく映像作品にも数多く出演し、とても多忙な仲村さんですが、なかでも舞台の仕事とはどんなものですか?
「映像作品だけをやっている期間が15年以上ありましたが、ドラマなら視聴率が良ければ『良かったね』と言われ、良くなければ何も言われない(苦笑)。映画では観客動員が多いほど多くの人が喜んでくれて、少ないと何か罪を犯してるような気分になったりする。すべての人が数字だけで作品を語るわけではないけれど、数字ではなく、『お客さんの顔を見てみたい』という感覚から演劇出演を始めたような気がします。お客さんに会って『どうですか?』って聞いてみたいというか、直接何かを手渡したら、どんな顔をしてくれるのかなって思ったというか…。
それはコロナ禍で改めて感じたことです。去年9月の“ケムリ研究室”第1回公演の『ベイジルタウンの女神』は、初日が迎えられるのかっていう不安な状態で幕が開いて――。初日のカーテンコールの拍手が、大切なことを思い出させてくれました。隣にいた水野美紀さんが『ヤバい!泣きそうだ』って言っていて、僕もほぼ同じ状態。お客さんの拍手ってこんなに嬉しいものか、こんなにいい音だったのかっていう感動と“気づき”がありました」

――舞台以外のお話も聞かせてく

――舞台以外のお話も聞かせてください。仲村トオルさんというと“穏やかで優しくてカッコいい大人の男性”というパブリックイメージがありますが、実際はどんな方ですか?

「自分がどこにいるかなんですけど、たとえばパパ友みたいな人達と一緒にいる時は、“感じのいい仲村さん”を演じてるような気がしてます(笑)。でもそれはストレスではなくて。家にいるときは、“いい家庭人”であろうとしている気もするんです。娘たちに尊敬されたいとか、強く思ってはいませんが、ガッカリはされたくないから“いいお父さん”、“いいダンナさん”であろうとしている。それは嘘ではなくて、そういうのもすべて本当の自分だと思うとなかなか一言では語れないですね(苦笑)」

――オフのリラックス・タイムにやっていることや、「これをしている時が一番楽しい!」ということはなんでしょうか。

「楽しいことというと、部屋を片付け終わった、掃除し終わった瞬間がすごく好きです。家ではものすごく掃除や片付けをします。やってる時はリラックスしているというよりむしろエキサイトしてますが(笑)、その時間が好きですね。娘たちには『我慢弱い』って言われてます。『これくらいの散らかり具合なら我慢すればいいのに』って。キレイ好きな父親っていいと思うんですけど(笑)。
たぶん僕は、それほどリラックスした状態を求めてないんですね。大げさに言うと恐れてるというか(笑)。そんなにリラックスしたくないから、柔らかい素材のダボっとした部屋着とか着る気もしないし持ってもないし。大げさですが、リラックスすることによって堕落していくことが怖いのかな(笑)」

仲村トオル

‘65年9月5日生まれ 東京都出身 血液型A型●’85年の映画『ビー・バップ・ハイスクール』のオーディションに合格し、俳優デビュー。以降、『あぶない刑事』シリーズ、『チーム・バチスタ』シリーズ、『家売るオンナ』シリーズなど数々の映像作品に出演。KERA MAP『グッド・バイ』など舞台のキャリアも重ねている。現在、ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』(テレビ東京系)が毎週水曜深夜に放送中。『連続ドラマW 密告はうたう』(WOWOW)が8月22日スタート。10月よりドラマ『日本沈没-希望のひと-』(TBS系)が放送予定。主演映画『愛のまなざしを』は年内公開予定。
【公式HP】https://www.kitto-pro.co.jp/

『砂の女』公演情報

劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と女優の緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」の第2回公演。近代文学の傑作と評される安部公房の小説『砂の女』を原作に、上演台本と演出をKERAが担当する。出演:緒川たまき 仲村トオル/オクイシュージ 武谷公雄 吉増裕士 廣川三憲●8月22日(日)~9月5日(日)シアタートラム、9月9日(木)〜9月10日(金) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
問:キューブ☎03-5485-2252 http://www.cubeinc.co.jp

撮影/平井敬治 ヘアメーク/宮本盛満 スタイリング/中川原 寛(CaNN) 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集部)

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最新号 202405月号

3月28日発売/
表紙モデル:山本美月

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