落語から仕事のしかたを考えてみた

こんにちは、編集長の今泉です。

こんにちは、編集長の今泉です。年末に立川談春さんの独演会に行ってきました。場所はシアター1010で、「シアターセンジュ」と読みます。センジュ→千住→北千住駅にあるホールで、たびたび落語会を開催しています。この名前をつけた人のしてやったり感がジワジワきますね…。

さて、今回の噺は「真田小僧」と「文七元結」の二席。

「真田小僧」は、子供が母親の不倫疑惑をネタに父親からお小遣いをせびる噺。ちょうど最終回を迎える直前だった大河ドラマ『真田丸』をマクラにしてからの流れでしたが、談春さんの演じる子供がとても小憎らしくて愛嬌たっぷり。ほんわかとした温かい笑いから、中入りをはさんでの二席目は人情噺の超名作「文七元結」です。

主人公は博打に明け暮れる左官屋の長兵衛。家に帰ってみると娘のお久が行方知らずだと妻が泣いている。そこに、娘は吉原の佐野槌(さのづち)がいるとの使いが来ます。行ってみると、娘が身売りをして借金を返すという。佐野槌のおかみさんにさんざん説教されて、来年の大晦日までに返せば、娘に客をとらせないという約束で50両を借ります。

その帰り道、吾妻橋にさしかかると自殺しようとする若者、文七に出会います。すんでのところで止めますが、話を聞くと集金した50両をすられたので死んでお詫びをしようとしたらしい。なんとか死なせないよう押し問答の末、50両を文七に投げつけて立ち去る長兵衛。ところが、文七は50両をすられたのではなく、先方に置き忘れただけだったことがわかります。

場面は変わって、長兵衛の家では夜通し夫婦喧嘩。その最中に、文七とその主人がやってきて50両を返そうとするが、江戸っ子の長兵衛は一度やったものは受け取れないの一点張り。なんとか説得して受け取ってもらうと、花嫁衣裳を着た娘のお久が駕籠に乗ってやってくる。文七を救った長兵衛の心意気に感動した主人が佐野槌から身請けをしたのです。そして、文七とお久はこれが縁で夫婦となります。その後、二人は店を構えて元結を売り出したところ江戸中に評判になりました、という年末にふさわしい大変めでたい噺です。

かなり端折ってもこんなに長い噺を、談春さんがたっぷり1時間半くらいかけてたっぷりやってくれました。その中で、一番グッときたのが佐野槌のおかみさんが長兵衛を説教する場面。

「なんでお前が博打にハマるか分かるかい? うまくいかないからだよ。左官の仕事はみんなが褒めてくれる。でも、普通にやればできることを褒められても、あんまり嬉しくないだろ。(仕事というのは)つまらないだろうけど、みんなが褒めてくれることをやらなきゃいけない。お前の仕事を見て、こんな素晴らしいことができる職人になりたいっていう後進のため、そして、お前を一人前に仕込んでくれた人のためにも、中途半端にしちゃいけないんだよ」

うろ覚えですが、こんな感じでした。

この、みんなが喜ぶことを飽きずに続けるということが仕事の本質じゃないかと思うんです。毎年、新入社員研修で「編集者だろうが何だろうが、すべての職業はサービス業だ」と言い続けてますが、どこまで彼らに通じているか分かりません。自分の力を試してみたいとか、仕事を通じて成長したいとか、仕事に取り組むモチベーションが自分中心になってる人って、はたから見てるとなんだか辛そうです。でも、喜んでほしい誰かが思い浮かべて仕事をすると、幸せな気分になれるし、地味な作業でも長く続けられるんじゃないかなと思います。

というわけで、社員編集者募集の締め切りまであと2週間。CLASSY.を買ってくれる読者のために全力で働いてくれる人が来てくれたら嬉しいです。

 

 

「VERY」「CLASSY」「STORY」編集者(経験者)採用のお知らせ

Feature

Magazine

最新号 202405月号

3月28日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup